研究実績の概要 |
食道切除術は、心臓や大血管から食道とリンパ節を切除し、消化管を用いた再建術を施行する高難度な手術術式であり、他の消化管手術と比較して高率に術後死亡が発生する。本邦で2011年から2013年に実施された食道切除術を対象に、病院あたりの年間の食道切除術件数であるHospital volumeと手術死亡率との関連を検証した。988施設で実施された16,556例の食道切除術を解析対象とした。Hospital volumeが30例以上の施設の手術死亡率は 1.5%であった一方で、10例未満の施設では5.1%であった。リスク因子とSurgeon volumeの影響を調整した多変量ロジスティックモデルでは、Hospital volumeは手術死亡 [オッズ比 0.86, 95%信頼区間 0.81-0.92 (10例毎), P < 0.001]と有意な関連を認めた。 次に、食道切除術は病床機能分化を掲げる地域包括ケアシステムの構築に向けて、食道切除術を受ける患者の現状の通院距離を把握し、食道切除術を機能集約させた場合のシミュレーションを実施した。2012年から2016年に本邦の1,041施設で食道切除術を実施した27,476人を対象に解析を実施した。リスク因子、Hospital volumeから手術死亡率を予測することができるモデルを作成し、その妥当性を検証した。現状では、全国平均の手術死亡率は2.2%、通院距離は中央値で約11kmであった。Hospital volumeが2、5、10、15例以上の病院へ機能集約した後の(1)病院あたりの増加患者数、(2)予測死亡率、(3)患者の通院距離、(4)通院距離の地域間格差を比較し、機能集約に至適なカットオフ値を検討した。本邦における外科手術の機能集約化の在り方を検討する基礎的材料とするため、今後、結果を学術雑誌へと報告する予定である。
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