研究課題
特別研究員奨励費
溝呂木・ヘック反応はアルケン合成の重要な手法の一つである。しかしながら有機硫黄化合物はアニオン性硫黄脱離基の触媒金属に対する強い配位や触媒毒性のため溝呂木・ヘック反応への利用は困難である。近年,酸化的付加が容易で脱離基が中性となるアリールスルホニウムを用いることで溝呂木・ヘック反応が達成された。しかしこの手法はアルキルスルホニウムへは展開されていなかった。そこで私はフォトレドックス触媒を用いてスルホニウムを一電子還元することで生じるラジカル種の利用を着想した。検討の結果,フォトレドックス触媒としてfac-Ir(ppy)3を用い,塩基としてNa2CO3を用いることで青色LED照射下ベンジルスルホニウムブロミドとスチレン類が反応することを見いだした。フォトレドックス触媒系の高い官能基許容性のため,本反応は種々の置換基を有するスルホニウムやアルケンに対し適用可能であった。また,スルホニウムの対アニオンが反応に与える影響についても検討を行った。スルホニウムブロミドを原料として用いた場合収率よくアルケンが得られたが,スルホニウムトリフラートを用いた場合は目的のアルケンのほかに第三級アルコールが副生した。しかしながら,添加剤としてテトラブチルアンモニウムブロミドを加えることでスルホニウムトリフラートをアルケンに効率よく変換できた。さらに,スルホニウムトリフラートとアルケンを水存在下反応させたところ,第三級アルコールの選択的な合成も可能であった。ベンジルスルホニウムではなく対応する臭化ベンジルを用いた場合アルケンは収率よく合成できるもののアルコール合成は低収率に留まったことから,スルホニウムを用いる優位性も示すことができた。また,原料であるベンジルスルホニウムは対応するベンジルアルコールから簡便に調製できるため,これを利用した多段階合成への展開も可能であった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件)
Chemistry - An Asian Journal
巻: 14 号: 4 ページ: 532-536
10.1002/asia.201801732
Angewandte Chemie International Edition
巻: 58 号: 12 ページ: 4002-4006
10.1002/anie.201812227
Angewandte Chemie - International Edition
巻: 印刷中 号: 22 ページ: 6653-6657
10.1002/anie.201802369
巻: 13 号: 17 ページ: 2397-2400
10.1002/asia.201800489
Heteroatom Chemistry
巻: 29 号: 3
10.1002/hc.21432
ACS Appl. Mater. Interfaces
巻: 10 号: 47 ページ: 40710-40739
10.1021/acsami.8b11022
ACS Catal.
巻: 8 号: 1 ページ: 579-583
10.1021/acscatal.7b03841
Org. Lett.
巻: 20 号: 4 ページ: 1134-1137
10.1021/acs.orglett.8b00060
120006406842
巻: 7 号: 11 ページ: 7623-7628
10.1021/acscatal.7b02347
巻: 18 号: 12 ページ: 2966-2969
10.1021/acs.orglett.6b01305
J. Am. Chem. Soc.
巻: 138 号: 44 ページ: 14582-14585
10.1021/jacs.6b10278