研究実績の概要 |
網膜静脈閉塞症 (retinal vein occlusion: RVO) は、病態解明と治療薬の探索が望まれている眼疾患のひとつであるが、それに必要とされる適切な動物病態モデルが存在しない。当研究室において、黒マウスを用いたRVOモデルの作製に成功したが (Scientific Reports, 7, 43509, 2017)、詳細な病態解明や治療薬の探索にはよりヒトに近い霊長類RVOモデルが必須である。 前年度、ある条件下のレーザー照射により、霊長類カニクイザルの網膜静脈を閉塞させることが可能であることを確認した。今年度は、その網膜静脈を閉塞させたカニクイザルを用いて、1週間間隔で蛍光眼底造影及び光干渉断層像 (optical coherence tomography: OCT) を撮影し、血管漏出及び浮腫の経時的な変化を検討した。また、閉塞8週間後にはサンプリングを行い、パラフィン切片作製後、H&E染色によって網膜の形態学的変化を観察した。 閉塞3日後まで生じていた黄斑浮腫や眼底出血などの臨床所見は、閉塞1週間後において回復傾向を示し、その後顕著な病態所見は認められなかった。また、パラフィン切片による網膜の形態学的観察においても、OCT画像で得られた結果と同様、閉塞8週間後には浮腫は改善していた。 本モデルを用いて病態解明及び薬効評価を行うにあたり、黄斑浮腫や無灌流領域、眼底出血などの臨床病態の評価期間が延長されるようなレーザー照射条件 (閉塞静脈本数・照射エネルギー) に変更し、治療薬である抗血管内皮増殖因子抗体を用いた評価が必要である。(株式会社新日本科学との共同研究)
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