研究実績の概要 |
西乗鞍古墳は奈良県天理市に位置し、西山古墳などと合わせて杣之内古墳群を形成する。全長は約118m,後円部径約66m,高さ約18mを測る前方後円墳である。後円部は2段構成になっている。原子核乾板を製造し、西乗鞍古墳外部、後円部東側に設置した。現像後に顕微鏡ステージでスキャンすることで後円部2段目,中心方向からミューオンの量が多くなっている結果を得た。これは奥行き7m、高さ2.7±0.8mの空間を想定することで説明が可能であり、東西方向に長い埋葬施設が作られていると考えられる。この結果は墳丘上部から別グループによって行われた別の物理探査結果とも無矛盾な結果を示した。これらの成果及び天理市の発掘調査による古墳規模の調査によって西乗鞍古墳の文化財としての価値が認められ現在、史跡にも登録されて遺跡の保存に役立てられている。 第二に、春日古墳は古墳時代後期の直径約30m、高さ約6mの円墳である。しかし未発掘であるため詳細は不明で埋葬施設に関してもわかっていなかった。法隆寺近くの立地で、南西150mの所には著名な藤ノ木古墳が存在する。春日古墳への原子核乾板によるミューオン検出器の設置を行い古墳中心部に幅1.8m、高さ2.0m、長さ6.1±0.5mの空洞を南北方向に検出している。近隣の古墳の埋葬施設との比較研究を行っている。藤ノ木古墳は6世紀後半の円墳であると副葬品から見積もられており石棺内からは豪華な金銅製履などが発見されている。埋葬施設は南東から中心方向に横穴式石室が作られている。先行研究では春日古墳と藤ノ木古墳に深い関係があった場合、両者で違うタイプの埋葬施設が作られている可能性が有ると指摘されているが、本研究では空洞の方向に違いが見られたものの明らかな石室タイプの違いは検出されなかった。
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