研究課題
特別研究員奨励費
昨年度までに、原始的ウニのノコギリウニからPmar1を同定し、ウニ以外の棘皮動物からはPmar1は見つからなかったものの、Pmar1に近縁なホメオボックス遺伝子を複数同定し、phb遺伝子とした。本年度は、Pmar1とPhbの機能がどのように進化したかを明らかにするため、ノコギリウニとイトマキヒトデを用いて機能解析を行なった。一般的なウニではPmar1を過剰発現すると、全ての細胞が骨形成細胞へと発生する。しかし、ノコギリウニを用いてPmar1の過剰発現実験を行なった結果、中胚葉性細胞は増加するが、骨形成細胞は増加しなかった。また、過剰発現胚では一般的なウニと同様にEts1やAlx1が活性化されたものの、HesCも全体で活性化された。以上の結果から、ノコギリウニにおいてもPmar1は中胚葉性細胞の特異化に関わっているが、HesCを介さずにAlx1やEts1を活性化していることが示唆された。一方、イトマキヒトデを用いてPhbのノックダウン実験を行なったところ、原腸形成と間充織細胞形成の阻害とEts1、HesCの発現抑制が観察された。また、Engrailed repressor domainもしくはVP16 activation domainとPhbの融合タンパクの過剰発現実験から、ヒトデのPhbも転写抑制因子であることが示された。従って、ヒトデにおいてもPhbは未知の転写抑制因子を抑制することで、Ets1とHesCを活性化していることが示唆された。今回得られた結果は、(1)Pmar1遺伝子がウニの共通祖先でPhbの重複によって獲得されたこと、(2)Pmar1の祖先遺伝子はヒトデとウニの共通祖先で既に中胚葉への機能をもっていたこと、(3)原始的ウニと一般的なウニの祖先が分かれた後、一般的なウニの祖先で、Pmar1の下流にHesCが挿入されたこと、を示唆した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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