研究課題
特別研究員奨励費
ABCA1 (ATP-binding cassette protein A1) は、善玉コレステロールとして知られるHDL 産生に必須の膜タンパク質である。我々は全反射照明蛍光 (TIRF) 顕微鏡を用いた1分子イメージングにより、ABCA1の二量体と単量体の相互変換がHDL産生に重要であることを報告している。ABCA1によるHDL産生機構をさらに解析してゆくなかで、他のABCタンパク質についてもTIRF顕微鏡観察を行ったところ、HeLa細胞においてABCC6 (MRP6) の興味深い局在性を見出した。すなわち、MRP6が細胞膜に加えて、細胞内に伸びる特徴的な管状膜構造体に局在することを見出し、これをMRP6-tubules と名付けた。MRP6-tubulesは、BARドメインタンパク質PACSIN-2や低分子量Gタンパク質Rab8、またMICAL-L1と一部共局在し、tubular recycling endosome と呼ばれる膜構造とオーバーラップするものであった。MRP6は弾性繊維性仮性黄色腫の原因遺伝子産物であり、臨床的にも重要である。MRP6は、ATP加水分解依存的に細胞外へATPを排出する。そこで、令和元年度中には、MRP6安定発現HeLa細胞を樹立し、細胞外へのATP排出を評価する系を確立した。この系は、今後MRP6によるATP排出活性の阻害剤探索などにも利用できる。また、ABCA1はこの管状構造からは除外されており、マウス線維芽細胞やブタ腎由来LLC-PK1細胞においてはMRP6-tubulesが形成されにくいなど、ABCタンパク質の種類や細胞種によって管状構造の形成状態が異なることを明らかにした。細胞がもつこのような管状膜構造の生理的意義は不明だが、本研究は、細胞外環境を細胞の深部に引き込み物質や情報のやりとりを行う膜構造の重要性を示唆するものである。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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