研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、認知バイアス課題を用いて、共感性に関わる場面でのラットの情動状態を計った。認知バイアス課題とは、中立な刺激に対する反応の偏りにより情動状態を推定する方法である。ラットをオペラント箱に入れ、2種類の高さの音声刺激をランダムに提示し、関連付けられた左右のレバーを押すように弁別訓練を行った。また、左右のレバーは高報酬もしくは低報酬に関連づけられていた。ラットに平等(パートナーと同じ量の餌をもらう)、不平等場面(パートナーだけ餌を多くもらう/自分だけ餌を多くもらう)を体験後に、訓練刺激の中間の高さの音(中立刺激)を呈示した。そして、中立刺激へのレバーの反応率、反応時間から情動状態を予測した。反応率に関しては、条件に関わらず中間刺激への反応率は一定であった。一方で反応時間は、平等条件に比べて、パートナーが餌を多くもらう不平等条件のときに、レバーへの反応時間は有意に短くなった。これは、ラットがパートナーの餌条件を観察しており、パートナーとの餌の違いによって情動状態が変化し反応時間が変化したと考えられる。条件に関わらず、高報酬試行への反応時間は、低報酬試行の反応時間よりも短くなる。この傾向から考えると、反応時間の短さはラットが正の情動状態を示している可能性がある。パートナー個体が豊富な餌をもらう場面では、パートナーが正の情動へ変化し、情動伝染によって、実験個体も正の情動へ変化したのかもしれない。一方で、認知バイアスに関する反応時間は、情動状態を示さないとの研究もある。また、平等不平等場面におけるレバーへの反応率には影響なかった。これらの要素を考えて、本実験の反応時間の変化を正の情動への変化と結論付けるにはさらなる検討が必要と考え、慎重な議論が必要であろう。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。