研究課題/領域番号 |
16K02338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
芸術一般
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
井上 雅雄 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (20151623)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2017年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2018年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2017年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2016年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 第2東映 / 映画の量産競争 / 経営多角化 / 大映の経営赤字 / 映画観客数の減少 / 新作2本立製作・配給 / 映画の量産体制 / 映画館の乱立と淘汰 / 新東宝の倒産 / 経営の合理化 / 芸術諸学 / 映画史 / 映画産業 / 大映 |
研究実績の概要 |
1960年東映社長大川博は第2東映(後にニュー東映と改称)を設立し、日本の映画市場の半分のシェアを獲得すると豪語し、それまでの週8本の製作・配給を12本に増加させる。それはこれまで暗黙裡に維持されてきた業界の競争秩序を根底から掘り崩すものであった。もともと東映は1954年に新作2本立ての製作・配給を断行して業界に量産競争をもたらした会社であるが、この新たな市場戦略は濫作による作品の質的低下をもたらしただけではなく、業界を巻き込んだ過当競争を生み、そのあおりを受けて1961年に新東宝が倒産する。既に1958年以降映画観客数が減少を続けるなかでのこの東映の戦略は、1年半で失敗に終わるものの濫作と作品の質の低下は、ただですらテレビの普及と高度成長期の可処分所得の上昇による人々の時間消費の多様化という環境変化のもとで、観客離れを加速させる。以降、映画業界はテレビではできない作品をという名のもとに暴力と性を主題とする作品の製作に傾斜し、各社も多かれ少なかれそれに追随することになる。 1960年代中葉以降、映画の産業的危機が進展するなかで、各社は様々に経営多角化を試み、映画製作への依存度を低めようとするものの成功することは少なく、わずかに路線転換を果たした東映と低空飛行ながら既存路線を踏襲した東宝を除けば、他社は経営の危機に見舞われる。とりわけ大映は、自ら所有する直営館も少なく、経営多角化もあまり行われず映画の製作・配給事業に特化してきたこともあり、60年代に入ると経営赤字が続く。大映はその赤字を会社資産の売却によって糊塗してきたが、その経営の態様は上述の映画産業の危機を集中的に体現するものであった。 以上のような東映の業界に果たした役割と他社との関係が明らかになったことは、本研究遂行上、重要であり、今期の研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は大映を含む映画各社の経営実態について調査研究し、その結果上述の実績報告のような事実が検出された。しかし1950年代の映画黄金期の分析も1960年代の分析と並行して試みたために、60年代後半期の分析がやや遅滞する結果となった。もっとも、1960年代の映画産業の動態を各社別に明らかにする学術的研究自体が、事実上はじめての試みであり、資料的困難さもあって進捗面で難しさがあったが、他方では、昨年秋以降私が体調を崩し、計画通りに調査研究を進めることができなかったことも、その理由として挙げねばならない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究の最終年度であるため、遅滞している1960年代後半の調査研究を進めながら、当初予定計画の通り大映の経営破綻を引き起こした経営内的要因の解明に傾注する。 映画産業の危機の中で、東映・東宝が厳しい競争環境を乗り切ったのに対して他の3社はそれが難しく、松竹はかろうじて{寅さん}シリーズなどを得て低空飛行ながら危機を脱出したものの、日活と大映は事実上経営破綻を余儀なくされる。その各々の経営内的要因を比較しつつ明らかにすることが、今期の研究の中心となる。
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