研究課題/領域番号 |
16K02432
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
日本文学
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研究機関 | 木更津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
加藤 達彦 木更津工業高等専門学校, 人文学系, 教授 (70321403)
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研究分担者 |
山崎 義光 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (10311044)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2017年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2016年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 日本近代文学 / 坂口安吾 / 旧蔵書 / 創作原理 / 間テクスト性 / 講談 / マニエリスム / 落語 / 報道 / 写真文化 / 戦後メディア / 国文学 / 比較文学 / 文学一般 / 思想史 / 表象文化論 |
研究実績の概要 |
加藤達彦と山﨑義光は、前年度に引き続き、これまでの研究と調査の成果を踏まえて適宜、連絡を取り合いながら個別に坂口安吾の文芸作品ならびに関連テクスト、さらには同時代の言説等との影響関係に注目しつつ対象作家の創作原理、およびテクスト生成に至る着想や思考様式に関する調査と研究を推進した。 特に当該年度においては、1998年に新津市文化振興財団によって発行された『坂口安吾蔵書目録』の電子データを加藤と山﨑で共有して今回の調査で明らかになった書き込み等の新情報を追記し、さらには『坂口安吾事典』(至文堂)に掲載されている「引用事典」のデータを連結させるべくオンラインを通じて協議した。 地道な作業ながら、こうしたデータ整理によって安吾の作品と参考・引用文献、さらには現存する蔵書との関連性がより明らかになり、対象作家の創作原理を追究する基盤を築くことができると期待している。 当該年度も新型コロナウイルスの感染拡大によって新津美術館での実地調査が叶わなかったが、加藤は新潟で開催された市民の勉強会に参加して情報収集するとともに古書店を通じて本研究に付随する文献を購入し、調査に努めた。その延長上で加藤は安吾の「ファルス」という手法と「マニエリスム」との関連に注目し、論文を執筆した。さらに加藤は落語・講談・浪曲といった話芸や紙芝居・活動弁士等の日本独自の文化と安吾を含む昭和初期の文芸との影響関係を考察・追究した。 一方、山﨑は坂口安吾の周辺作家である横光利一について「雑種」としての文化という観点から考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、当初はもっと頻繁に坂口安吾の旧蔵書を保管する新津美術館へ足を運び、実際の資料を調査する予定だったが、新型コロナウィルスの感染拡大による保管施設への入場制限等が影響し、初めに立てた計画通りに実地調査が進まない状況が続いている。 それでも旧蔵書の書き込み等に関するデータについては、ご子息の坂口綱男さん、旧蔵書を管理する学芸員の岩田多佳子さんらの協力のおかげでおおよその整理がついてきた。今後はそうした情報と作品との影響関係を精査しながらデータベースの構築に専念していく予定である。その足がかりとして昨年度は安吾自身が明確に書き記している参考・引用文献の書誌データと作品リストを連結し、さらにそれらの文献が蔵書として現存しているか、また書き込み等が確認できるかを一元化するデータの構築を試みたが、当該年度は1998年に新津市文化振興財団より発行された『坂口安吾蔵書目録』の電子データを加藤と山﨑で共有し、今回の調査で明らかになった書き込み等の新情報を追記して将来的な調査・研究の利便性を図ることを検討した。 思うように実地調査が叶わないなか、加藤と山﨑は適宜、Eメールやオンライン会議を通じて情報交換を行い、調査・作業の方針を取り決めて研究遂行に努めている。また実地調査が困難なため、代わりに個別の関心領域に基づいて古書を購入したり、国立国会図書館のデジタル資料を閲覧・複写したりする等、これまで工夫を重ねながら文献調査を実施し、当該作家のテクスト分析や創作原理の追究を継続している。 その成果の一つとして、加藤は当該作家の「ファルス」という手法に注目した論文を執筆し、学会誌への投稿を計画中である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以来、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、十分な実地調査を行うことができず、研究が遅れ気味のため昨年度に引き続き、2023年度も旧蔵書に見られる顕著な特徴や特筆すべき書き込み等に注目して、それらの文献が安吾の文学観や作品形成にどんな影響を与えたか、〈間テクスト〉性の観点から個別・具体的に考究していくことを優先していく予定である。 そのうえで『坂口安吾蔵書目録』のデータの電子化と新情報の追記等を行い、調査・研究の利便性を考慮したデータベースの構築を本格化させていきたい。また、あわせて昨年度に試行した安吾の作品リストと参考・引用文献、蔵書目録と書き込み等の情報を一元化するデータベースの整理も継続して行っていく予定である。これらの作業・考察にあたっては、これまで同様、研究代表者である加藤と研究分担者である山﨑が互いの職務状況や資料内容に応じて臨機応変に協議して分担を取り決め、研究を進めていく。 2023年度は新型コロナウィルスの感染拡大による様々な制約が緩和される見込みであり、また本研究の最終年度となるゆえ、新津美術館や「安吾風の館」等の協力を仰ぎながら、可能な範囲で実見調査に臨みたいと考えている。また、そうした過程で地元の研究者等とも交流を図り、積極的に情報交換を行っていきたい。昨年度は本研究の延長上で新潟を中心に活躍されている映画監督と知り合う機会に恵まれたため、当該作家と映画の関係等、表象文化論的なアプローチからの調査・考察を深めたいと考えている。 そしてこれまでの調査や研究で明らかになったことを整理し、加藤と山﨑で個別あるいは共同で学会や研究会等で発表を行い、その内容を論文の形にまとめ公表することを目指したい。
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