研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、国家領域を基礎構成単位としない新しい地域「マクロリージョン」の登場により、EUの領域的結束が強化されたことを明らかにすることにある。マクロリージョンは、国家を頂点とする堅牢な空間統治ヒエラルキーではなく、国家以外の行為体も政策決定に参加する柔軟な領域である。本研究では、欧州委員会地域政策総局が中心となり規範形成を進めているドナウ川流域の『EUドナウ戦略』を検証し、現地調査と政策決定過程の言説分析により、EUによってマクロリージョンが領域的結束促進の政策容器として積極的に導入され、EU主導型のクロススケールガバナンスが形成されていることを明らかにした。
本研究では、課題解決型のドナウ川集水域マクロリージョンを政策容器とする「EU主導型」のガバナンス形成を明らかにした。マクロリージョンでは、国家を頂点とする堅牢な空間統治ヒエラルキーから抜け出した地方政府や漁業者、NGOなどの行為体や利害関係者が、EUと連携しながらマクロリージョンの規範作りに参加している。この「国家の再スケール化」のアナーキーな空間統治の混沌と、それが収斂するガバナンス形成を説明しうる「クロススケールガバナンスモデル」の立証により、ウェストファリア後の政治空間のあり方を検証するとともに、スケールの異なる国際的行為体同士の「スケール間の闘争」を的確に説明することを可能とした。
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北東アジア地域研究 = Journal of Northeast Asian studies
巻: 23 ページ: 29-39
地理月報
巻: 548 ページ: 9-12
巻: 22 ページ: 1-17
40020963204