研究課題
基盤研究(C)
直線的なナノ細孔中では、低温で熱ドブロイ波長が細孔径より大きくなる結果、軸方向の自由度のみを持つ1次元ヘリウム3流体が形成されると考えられる。この流体が1次元量子流体である朝永ラッティンジャー(TL)液体を実現しているか核磁気共鳴を用いて検証を行った。1次元系を実現する低温ではTL液体の振る舞いに合致した温度に反比例するスピンスピン緩和が観測された。孔間の接続のみが異なる3次元細孔を用いた対照実験からは、この振る舞いが1次元状態のヘリウム3に特有の現象であることが実証された。
1次元量子系は理論的には取り扱いやすく、また3次元系とは全く異なる物性を示すため、様々な技術を発展させながら精力的に研究されてきたが、その実験的な実現は容易ではなく、近年になりようやく電子系やスピン系でTL液体の振る舞いが観測されるようになった。一方、原子が実際にフェルミ液体を作るヘリウム3系では、本研究で初めてTL液体と合致する特徴が観測された。ヘリウム3系は電子等とは異なる相互作用をもち、新たなTL液体のモデル系となりうる。その実証は1次元量子系の物理をこれまで以上に発展させることが期待される。
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