研究課題
基盤研究(C)
本研究では各種培養環境におけるシアノバクテリアの生育、貯蔵多糖(グリコーゲン、澱粉)、遺伝子発現の消長を調べた。多糖合成能欠損株の解析から、非至適温度での生育には貯蔵多糖の蓄積が必須であることが明らかとなった。塩ストレス条件では種による塩耐性の程度に応じて異なる適合溶質(グルコシルグリセロール、トレハロース)を産生することが分かった。非窒素固定種は窒素欠乏条件で生育阻害の症状を示し、貯蔵多糖量は窒素栄養源添加時より著しく増大した。これに対し窒素固定種の貯蔵多糖は明期での蓄積と暗期での分解を反復した。非窒素固定種では栄養欠乏条件において無機栄養取込、同化初期段階を担う遺伝子の発現が増大した。
本研究で解析したシアノバクテリアの一部の種は植物型澱粉を生産する希少な原核生物である。本研究ではより一般的なグリコーゲン(原始的な貯蔵多糖)生産種と澱粉生産性シアノバクテリア種の代謝特性を比較することにより、澱粉蓄積の生理的意義、ならびに澱粉合成機構の進化に関する重要な知見を得ることができた。また原核生物の特徴として細胞小器官を持たないなど代謝機構は簡素であり、温度、塩濃度、栄養欠乏など外環境の変化に対してより強靱な耐性を備え、柔軟な応答を示すことが明らかとなった。これら植物型澱粉生産性シアノバクテリアの特性を活用し、これまでにない構造物性を有する新規澱粉素材の開発が期待できる。
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