研究課題
基盤研究(C)
本研究では大腸菌の酸性pHセンサーEvgSの活性化機構を検討した。EvgSはpH 4.5から6 の弱酸性下で活性化し,菌の酸耐性化に関わる多くの遺伝子の発現を誘導する。培地(細胞外)をpH5.7にしても,培地への有機酸の添加や嫌気状態での培養によってEvgS活性が阻害されることから,細胞内外のpH差がEvgS活性に必要であると仮定した。ところが,pH差が存在しても少量の有機酸の添加によってEvgSは不活化した。さらに,嫌気状態での不活化はユビキノンがEvgSのPASドメイン内システイン残基間S-S結合を切断するためだと考えられ、ユビキノンを介したEvgS の新規活性化メカニズムを提唱した。
本研究では大腸菌の酸性pHセンサーEvgSの活性化機構を検討した。病原性大腸菌は優れた酸耐性能を有しており、そのため少数の菌数でも食中毒などを引き起こすものと考えられている。EvgSは酸耐性化に関わる遺伝子群の発現制御を行い、その活性化機構を解明することは食中毒予防に貢献する。本研究ではEvgSが酸性pH以外に酸化還元状態にも応答することを見出した。さらに、酢酸や安息香酸などの有機酸によってEvgSが不活化するのは、単に細胞内外でのpH勾配の喪失では説明できないことが判明した。有機酸によるEvgSの不活化機構をさらに解析することで、細菌に対する有機酸の影響のより深い理解が期待される。
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