研究課題
基盤研究(C)
本研究課題では、オルガネラの健常性を維持するための分子機構を明らかにすることを主たる目的とした。特に、ミトコンドリア、脂肪滴の健常性(恒常性)維持の分子機構について、脂質代謝およびオートファジーに着目した解析を進めた。ミトコンドリア特有の脂質であるカルジオリピンの脂肪酸部分の組成を決定する要因として、タファジンと呼ばれる酵素が持つ基質特異性を明らかにした。オートファジー機能タンパク質であるAtg8が中性脂質分解(リポリシス)を抑制する働きをもつことを示した。さらに、ESCRTと呼ばれるタンパク質ファミリーに依存した、液胞膜の変形を伴うオートファジー(ミクロオートファジー)を見出した。
本研究では、カルジオリピンがいかにして不飽和脂肪酸鎖を多く含むリン脂質として合成されるのか、という問いについて、タファジンという、ヒトの疾患にも関与する酵素の基質特異性から答えを得られたことが大きな意義である。また、脂肪滴の量調節は細胞内の中性脂質量も左右する重要性をもつが、オートファジーに機能するタンパク質がこの量調節に機能するという発見は、哺乳類細胞にも共通するもので普遍的重要性を持つと考えられる。さらに、リソソーム(液胞)膜が直接変形して分解対象を取り込むミクロオートファジーの新たな分子機構を提示することができたことは、オートファジーの多様性理解に大きく貢献したと考えている。
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