研究課題/領域番号 |
16K07778
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
森林科学
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鍋嶋 絵里 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (10710585)
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研究分担者 |
石田 清 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10343790)
織部 雄一朗 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (40370853)
中塚 武 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (60242880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2017年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2016年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 安定同位体比 / 早材 / フェノロジー / 木部 / 年輪 / 安定同位体 / 季節変化 / 冷温帯林 / 酸素同位体比 / 開葉フェノロジー / 温暖化 / 地域変異 / 適応策 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、愛媛県内2箇所におけるブナの年輪試料を用いて、水素および酸素安定同位体比の年輪内変動を明らかにした。これら2箇所は(愛大演習林および笠取山)、同じ愛媛県内ではあるが、演習林は積雪量が少なく笠取山は比較的多い。それぞれ3個体ずつのブナの成木について、2014-2020年および1985-1990年(演習林のみ)の年輪について水素と酸素の安定同位体比の年輪内変動を測定した結果、どの年輪についても、早材において貯蔵養分の利用を示すような安定同位体比の変動パターンは見られなかった。これまでにミズナラでわかっている結果では、春先に作られる早材の部分では、貯蔵養分の利用を示すような安定同位体比の変動パターンが見られている。よって、ブナとミズナラとでは、早材における成長変動のメカニズムが異なることが示唆された。一方、約30年前の年輪と現在に近い年輪とでは、傾向は異らなかったことから、安定同位体比の変動パターンに対する気候変動の影響は認められなかった。
また、木部試料を季節的に採取し、木部形成の季節変化について顕微鏡観察を行なった。ブナは展葉終了後に木部形成を開始し、ミズナラは展葉終了前に木部形成を開始するが、これに伴い、木部のデンプンレベルはミズナラでは早材の形成中に低下する様子が観察された。一方、ブナでは、木部形成開始後のデンプンレベルの低下は見られなかった。つまり、ミズナラではデンプンなどの貯蔵養分を用いて早材の形成を行い、ブナでは早材においても貯蔵養分は用いていないことが示唆され、安定同位体比の変動パターンの結果とも一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安定同位体比を測定するには、木部年輪試料をセルロースにした上で、実体顕微鏡下で年輪内を10数個に切り分け、数十マイクログラムずつ秤量を行うという作業が必要であるが、実体顕微鏡下での切り分けが難しく、予想よりかなりの時間を要する。特に、ブナでは木部の構造上、柔組織という年をまたぐ組織があり、これを取り除かないと年輪内変動を正確に出すことができないことも、セルロースの切り分けを困難にしている。また、これと合わせてコロナの影響などにより、サンプリングが困難であり、安定同位体比のための年輪試料は特殊な機械を用いて採取するため、共同研究者に採取してもらうことが難しかったため、試料採取ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
木部形成の季節変動については、愛媛県と八甲田地域について試料採取ができており、これについては顕微鏡観察をほぼ終えており、これらの地域間比較についてまとめる予定である。 安定同位体比については、今年度中の新たな試料の分析は困難である可能性が高い。現在、愛媛県内の2箇所について分析を終えているが、これらの地域のうち一方は積雪量が比較的多いため、積雪量の異なる地域として比較が可能であると考える。この結果について、季節的な成長変動における貯蔵養分利用およびその地域間差、樹種間差としてまとめる。 全体として、顕微鏡観察の結果と安定同位体比の結果とを比較し、季節的な成長変動のメカニズムを明らかにする。
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