研究課題
基盤研究(C)
中分化腺癌の成分を多く含む腫瘍群のうち(1)複数組織型混在胃癌(混合型)、(2)EBV群、(3)MSI群について以下の結果を得た。(1)混合型は44.5%を占め、リンパ節転移率は23.5%と他に比して高い傾向にあった。(2)EBV群は7.9%を占め、リンパ節転移率は4.2%で、非EBV群(21.9%)に比して有意に低く、多変量解析でも非EBVは独立したリンパ節転移危険因子となった。特に、脈管侵襲陰性のEBV群に転移は無く、粘膜下層深部浸潤癌であっても局所切除のみで根治する可能性がある。(3)MSI群は7.5%を占め、リンパ節転移陽性率は23.1%であり、非MSI群との間に有意差はなかった。
早期胃癌の治療方針を決めるにあたり、高分化、中分化、低分化といった病理組織学的な分化度の判定は現在重要な因子の一つである。ただし、中間的組織像を示す中分化腺癌の判定はしばしば難しく問題となっていた。今回の研究で、中分化腺癌の成分を含む一部の腫瘍群、特にEBV群の場合、分化度の判定を一切行うことなく、脈管侵襲の判定を加えるだけで内視鏡治療の適応が決められる可能性があることがわかった。現在行われている病理組織学的評価に基づく治療方針決定の現状に加え、近年確立されつつある分子分類の要素を臨床応用することが可能でとなれば、個々の患者にとって、より適切な治療方針を選択することに貢献できると期待される。
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