研究課題
基盤研究(C)
ヒト癌細胞では好気的環境下でも解糖系が有意に働くグルコース代謝のシフト(Warburg効果)が生じており、環境ストレス下での癌細胞の生存や悪性化進行に密接に関係していると考えられている。PDK4は解糖系から呼吸系への分岐点でピルビン酸をアセチルCoAに代謝するPDHを抑制する調節分子であり解糖と呼吸のバランスを制御するRegulatorの1つである。我々はPDK4阻害活性を持つ低分子化合物(KIS)に着目し、ヒト膵臓癌細胞株を中心にしたin vitro及びin vivoの腫瘍モデルを用いてその抗腫瘍効果と作用メカニズムを明らかにした。特にこの薬剤はKRAS変異のある難治癌に有効であった。
K-ras遺伝子変異が90%を占める膵臓癌は癌の中でも最も10年生存率が低い難治性癌であり、有効で副作用の少ない新規分子標的治療薬の開発は大きな課題である。また、大腸癌は最も罹患率が高い癌で、特にK-ras遺伝子変異は44%を占めこれらは予後が悪く難治性が高い。米国でも癌治療の最重要課題として”The RAS project”を立ち上げているが、これまでのRas阻害剤では未だ有効な臨床的成果を上げていない。これらの難治癌に対する新しい作用機作の抗癌剤の開発は重要であり、我々が見出したピルビン酸代謝を標的としたKIS化合物の抗腫瘍活性を示した今回の成果は臨床での治験にも直接つながると考えられる。
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