研究課題
基盤研究(C)
癌C5a受容体(C5aR)発現は癌浸潤、病期、リンパ節・肝臓転移、および予後不良との相関がみられた。前立腺癌では、C5aR発現は臨床病理学的パラメーターとの相関はみられなかったが、C5aによる株化癌細胞グルタミン消費、増殖、浸潤の亢進が認められた。さらに、癌免疫抑制に関わるPD-L1のC5aによる発現亢進はC5aの癌免疫応答からの回避への関与を示唆した。アルザス反応による内因性C5a産生により、C5aR発現癌細胞の浸潤と腫瘤形成が亢進し、MDSC浸潤も誘導された。これら癌進展および癌免疫応答回避作用から、C5a-C5aR系標的治療法の有効性が示唆された。
C5aが約半分の症例で前立腺癌が発現するC5a受容体を介して癌細胞のグルタミン代謝、増殖や浸潤能を亢進すること、さらにキラーTリンパ球による抗腫瘍免疫応答を抑制するPD-L1の癌細胞発現を増加させることは、生体防御系の補体系の分子C5aの癌促進かつ抗腫瘍免疫抑制への関与を示しており、これまで炎症メディエーターと考えられていたC5aの新たな概念を提示して学術的意義が高い。C5aやC5a受容体に対する抗体や受容体拮抗剤等によるC5a-C5a受容体シグナルの遮断は癌進行抑制効果が推測され、この系を標的として開発された薬剤は新たな前立腺癌治療として臨床的に有効性が期待されて社会的意義がある。
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