研究課題
基盤研究(C)
HBV感染による肝線維化要因の一つとして、HBVによる細胞内ストレスの上昇を仮定しin vitro実験系でHBV存在下での細胞内ストレスの変動を検証した。代表的な細胞ストレスである小胞体ストレスあるいは抗酸化作用は、ウイルス量の増減と関連せず殆ど変動を示さなかった。in vitroではHBVと細胞ストレスの関連性の検証は困難と思われたため、次のステップとしてin vivo実験系利用を試みた。肝障害コントロール群と肝障害群を非侵襲的に区別可能なマーカーを検索するため、それぞれの肝臓組織と血清サンプルを用いて糖鎖解析を行ったところ、血清サンプルデータにおいていくつかマーカー候補が確認された。
HBV感染による肝線維化は細胞ストレスと密接に関与していると推測されているが、その詳細は長年の研究にもかかわらず未だに明らかになっていない。本研究は、従来までのタンパク強制発現系の結果をさらに発展させ、生理的に近い状態でのHBV感染により細胞ストレスかどうかを検証する非常に重要、かつ独創的な研究である。本研究から、肝線維化に重要な役割を果たす細胞、ウイルス因子、シグナル伝達経路が明らかになると予想される。肝線維化は肝硬変・肝癌の前段階と考えられているため、その進展の機序解明による社会的貢献は非常に多大である。
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