研究課題
基盤研究(C)
小細胞肺癌(SCLC)手術症例42例の解析では,5年生存率は57.2%であった.単変量解析では男性,術後補助化学療法なし,混合型,CEA高値,SCC高値が有意な予後不良因子であった.免疫組織化学染色では,CADM1はSCLCの71%で強陽性であり、患者の予後不良と有意な相関を示した.さらに,CADM1は正常肺や脳では認めない特異的なスプライシングを受けていることを見出した.機能解析では,siRNAによりCADM1発現を抑制したSCLC細胞では球状細胞集塊の形成が抑制された.以上より,CADM1バリアントがSCLCの悪性増殖能に強く相関しており,治療の分子標的となる可能性を持つことが示唆された.
小細胞肺癌(SCLC)は急速な進展能と高い転移能をもつ難治性腫瘍の代表であり,新たな診断法や治療法の開発が望まれている.本研究は細胞接着分子CADM1 に着目し,SCLCにおいて特異的なスプライシングバリアントを受けていることを独自に見出して研究を進めている.このCADM1バリアントは正常肺では認めないため,診断標的として有用である.また,癌の浸潤能や免疫応答に関わるCADM1の分子機構の解明は,今後の癌の細胞接着研究の重要な知見になるばかりでなく,新規の癌免疫療法の医薬品開発に直接結びつく可能性がある.この研究を通して、SCLCを患った多くの患者さんに恩恵がもたらされることを期待する.
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