研究課題
基盤研究(C)
腎生検組織を用いた検討で障害された糸球体にて脂肪酸結合タンパク4(FABP4)が新規発現し、その局在は糸球体内皮細胞にあることを確認した。また健常人では尿中FABP4排泄量が尿中アルブミン量および経時的な腎機能の低下度と関連し、腎生検症例では尿中FABP4排泄量が腎機能と有意な負の相関、尿タンパク量と有意な正の相関を示すことを確認した。更にマウスを用いた検討により、障害された動脈内皮細胞においてFABP4が新規発現および分泌することを確認し、腎炎モデルおよび糖尿病モデルではFABP4が糸球体内皮細胞に新規発現していることを確認した。
本研究によって早期糸球体障害マーカーとしての尿中FABP4排泄量の有用性が明らかにされ、今後臨床応用されることにより慢性腎臓病の発症早期からの治療介入が可能となり得る。また腎疾患では腎生検組織をFABP4で免疫染色することにより、予後の推定や治療反応性の推測が可能になり得る。今後さらにFABP4が糸球体係蹄内細胞増殖や糸球体上皮細胞の形態保持などに与える影響を分子生物学的メカニズムまで掘り下げて検討することにより、腎機能増悪や尿タンパク出現の機序の一端を解明される可能性がある。
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