研究課題
基盤研究(C)
頻回の輸血による鉄過剰は、造血幹細胞移植後のGHDや骨髄異形成症候群をはじめとする自己免疫疾患に影響を及ぼすことが示されてきた。本研究では、in vitroにおけるnaive T細胞からの分化過程において鉄負荷はIL-6やIL-21の産生を通じてTh17>Tregへの誘導を促進することで免疫を有意に増強することを示した。また、GVHDモデルマウスや腸炎モデルマウスにおいて鉄負荷がTh17の腸粘膜への浸潤を通じて腸炎を悪化させていることを示した。すなわち、鉄過剰状態は、免疫機能を増強することで様々な免疫疾患の病態に関わっていることが示唆された。
鉄の過剰状態が人体の様々な機能に影響することは知られているが、免疫機能に対する影響は明らかにされていない。本研究では鉄負荷がTreg/Th17バランスに影響を及ぼすことを示したが、これらは自己免疫に大きく関わっていることが知られている。骨髄異形成症候群(MDS)では頻回の輸血が必要であり、鉄の過剰が貧血だけでなく、骨髄異形成症候群の病態そのものに影響しているのであれば、鉄負荷のコントロールの重要性はさらに増す。一方、造血幹細胞移植後の様々な合併症は複雑で原因究明が困難であるが、鉄負荷の軽減することにより移植後のGVHDを軽減することができれば移植の成績の改善につながる。
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