研究課題
基盤研究(C)
Imaging Mass Spectrometryによるマウス後根神経節神経細胞の観察系を構築中であった。単細胞での評価の前にまずは後根神経節自体でのリン脂質の動態を確認し、ある程度リン脂質の見当をつけて単細胞におけるリン脂質の解析をしていく方針とした。具体的にはC57B6Jマウス8週齢のオスを用いて左大腿を切開し坐骨神経を露出、切開し坐骨神経損傷モデルを作成した。坐骨神経損傷後5日で後根神経節を摘出し、左側のL3-5の後根神経節とコントロールとして右側のL3-5の後根神経節をCTBで包埋し、凍結した。次にCyostat を用いて凍結切片を作成しイオンコートされたスライドグラスに乗せた。その後、自動スプレー機を用いて凍結切片をスライドグラスごとDHBコーティングし、Imaging Mass Spectrometryによる解析を行った。解析の結果として坐骨神経損傷の後根神経節神経細胞においてm/z 772.5,と820.5が上昇する傾向がみられた。m/z772.5は甲状腺乳頭癌や濾胞リンパ腫で上昇し炎症に関係があるという報告があり、m/z 820.5もアラキドン酸含有リン脂質であり炎症に関係する。これらが坐骨神経損傷後に後根神経節神経細胞にて上昇するという傾向がみられた。今後は再現性を確認した上でTOF-SIMSを用いた後根神経節神経細胞における坐骨神経損傷後のリン脂質の変化および局在を調べていく予定であった。