研究課題
基盤研究(C)
立位バランスは無意識のうちに最小の筋肉活動エネルギー消費で維持されている。一方、バランスを欠いた姿勢は、その起立位を保つために過大なエネルギー消費を要する。これが脊柱後弯変形によって筋疲労性に腰背部痛が生じ、起立歩行障害が発生するメカニズムである。一方、長時間の起立歩行を可能とする脊柱配列を外科的治療で再建するためには、エネルギー消費が最小となる理想の姿勢を解明する必要がある。このため、本研究では大規模住民コホートを対象にして、日常生活で腰痛を経験しない検診者の脊柱配列を調査した。その結果、ヒトは固有の骨盤形態角に相当する腰椎前弯を形成し直立位を保つことが理想の姿勢であることが判明した。
ヒトは固有の骨盤形態角に相当する腰椎前弯を形成し直立位を保つことが理想の姿勢であることを本疫学研究で解明した。また、加齢に伴い脊柱後弯が進行し、骨盤形態角と腰椎前弯の間に解離を認めるようになると、筋疲労性に背部痛や腰痛などの軸性疼痛が発生するリスクが高まることも証明した。本病態は過去において原因のわからない腰痛、非特異的腰痛とみなされていたものである。新しい疾患概念としての脊柱後弯症による筋疲労性軸性疼痛の病態を理解することで、既存の治療体系の中に存在する不必要もしくは有害とみなされる医療が駆逐され、腰痛治療成績のより一層の向上が期待できる。
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