研究課題/領域番号 |
16K11383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
形成外科学
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
森川 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (70339000)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2016年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2017年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2016年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 血管新生 / 創傷治癒 / 神経幹細胞 / 既存血管壁の内皮細胞 / 既存血管壁の周皮細胞 / 骨髄幹細胞 / 組織内在性の幹細胞 / 糖尿病 / 周皮細胞 |
研究実績の概要 |
平成28年度には、毛包バルジ領域に存在する神経幹細胞が周皮細胞へ分化する可能性を検証するために多重免疫染色法を中心とした検索を行った。生検パンチを用いてマウス背部皮膚に創傷を作製して創傷皮膚組織の凍結切片を作製後、神経幹細胞、周皮・内皮細胞マーカーを用いた染色を行ったところ、神経幹細胞マーカーの一つとされるnestinの発現が正常皮膚ではバルジ領域のみに限局して観察される一方、創傷皮膚ではバルジ領域に加えて創傷部の新生血管内皮細胞にも発現することが明らかとなり、一見したところ神経幹細胞から内皮細胞への分化が起こったと考えられたが、創傷皮膚のバルジ領域は正常皮膚のものに比して大きな形態学的変化はなく、実際には神経幹細胞による内皮細胞への分化の形跡は追跡できなかった。また、創傷隣接部に存在する既存血管の内皮細胞にもnestin発現が確認されたことを考慮した場合、内皮細胞は神経幹細胞から分化したのではなく、既存血管の内皮細胞から分裂増殖したものであり、この増殖過程において活性化した内皮細胞がnestin発現を新規に獲得したものと推測された。中間径フィラメントであるnestinは細胞分裂の調節に働くことが知られており、内皮細胞の増殖過程に重要であることが考えられる。一方で、周皮細胞にはnestinそのものの発現を認めなかった。これらの検索結果は、新生血管壁を構成する周皮細胞と内皮細胞が毛包潜在性の神経幹細胞に由来しないことを強く示唆するものである。さらに、遺伝子改変マウス(神経幹細胞マーカーsox2の発現と周皮細胞を含む壁細胞への分化の指標となるMyf5の発現が蛍光シグナルにより可視化される)の創傷皮膚を用いた多重染色実験からも、同様に、血管新生時に際して周皮・内皮細胞が神経幹細胞から分化誘導されないことを示唆するデータが得られる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は血管新生時に周皮細胞が内皮細胞の発芽的成長を促進する可能性をこれまでに報告してきたが、この場合に、血管新生促進に働く周皮細胞が何処から動員されてくるのかについては未だ不明のままとなっており、その正確な起源の同定が急務であった。周皮細胞の由来を明らかにすることは、周皮幹細胞の移植による血管新生促進という技術開発にも非常に有用であり、将来的には糖尿病で認められる血管新生不全による創傷治癒遅延の改善への貢献が大いに期待できる。 一方、近年、皮膚毛包毛包バルジ領域に存在する神経幹細胞が、皮膚創傷治癒過程における血管新生において内皮細胞に分化する可能性が示唆されたことから、我々は、周皮細胞の起源も同じくこれらの神経細胞に求められるのではないか、という仮説を立て、本研究に臨むこととなったが、平成28年度の検索結果からは、この仮説とは異なり、新生血管を構成する内皮細胞・周皮細胞ともに毛包神経幹細胞に由来しないことが示唆されるデータが得られることとなった。 しかしながら、我々はこの結果を単にネガティブデータとして捉えるのではなく、むしろ血管生物学の観点から大いに意義のあるものと捉え、逆に、今回得られたデータを、精確に周皮細胞の起源を絞り込み追求して行く際の手掛かりとして積極的に活用し、研究を進めていきたいと考えており、このような理由で、上の「区分」では、「おおむね順調に進展している」と自己点検評価を行った次第である。従って、以下の「今後の研究の推進方策」に具体的に記述するように、当初の研究計画からは変更が生じるものの、引き続き周皮細胞起源についての検索を続行し、これを明らかにし、さらに、最終的には当初の計画でも触れた、血管新生不全の病態モデルを用いた応用的実験にも挑戦していきたいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
検索から得られた結果は仮説とは異なるものであったが、我々はこの結果を意義あるものと考え、これに準じて計画を変更しつつ、皮膚創傷治癒過程の血管新生における周皮細胞の起源を引き続き追跡することを企図している。平成29年度の研究では、先ずは多重染色手法を主たる検索手法として引き続き用い、周皮細胞の起源の候補を絞り込んでいく。微細構造レベルの検索は、この作業がある程度進んだ段階で有効に活用したい(当初は、初年度にある程度の微細構造解析を行うことを念頭に置いて超薄切片作製用ダイヤモンドナイフの購入を予定していたが、計画に変更を加える可能性が生じた時点で購入を延期している)。 検索は具体的に以下のように進めていく。 1.創傷皮膚バルジ領域は正常皮膚のものと比べて大きな形態変化が認められなかったことから、神経幹細胞による内皮細胞への分化の形跡は追跡できなかったが、この点をさらに詳細に検証するため、BrdU等の細胞増殖マーカーの染色をバルジ領域に施し、細胞の増殖性においても創傷皮膚と正常皮膚の間で差がないか検索する。 2.周皮細胞の起源としては、神経幹細胞以外にも(1)既存血管壁の周皮細胞や、(2)結合組織内の間葉系幹細胞、または(3)骨髄由来幹細胞が考えられる。このうち、(1)、(2)の可能性については血管基底膜との関連性や間葉系幹細胞マーカー発現を追跡することで検証していく。また、(3)の可能性については、GFP骨髄キメラマウスを用いて骨髄由来細胞を予め標識して追跡を行う。そして、周皮細胞の起源が明らかになった段階で、最終年度には血管新生不全の病態モデルを用いた応用的実験に移りたい。そして、病態モデルでは血管新生部への周皮細胞の動員に果たして問題が存在するのか否かを明らかにし、最終的には周皮幹細胞移植が血管新生不全を改善しうるか、という可能性を視野に入れた検索にまでつなげていきたい。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度は、多重免疫染色法を主体とした検索を行っていく計画にしており、これには血管壁構成成分や各種幹細胞に対する抗体が多く必要となる。我々が普段使用する一次抗体の購入には大凡70000円程度の金額が必要であるが、次年度への繰越金228,935円は、幾種かの一次抗体の購入に使用したいと考えている。
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