研究課題
基盤研究(C)
三叉神経痛の治療法として、大脳皮質運動野の電気刺激が行われている。運動野の電気刺激で、痛覚抑制が生じるメカニズムについて、解剖学的、行動学的に明らかにすることを目指した。ウイルスベクターによるトレース実験により、運動野からの投射軸索が、感覚野と帯状野、前頭眼野に多く分布し、中脳水道周囲灰白質にはあまり分布しないことが分かった。そのため、運動野→帯状野→中脳水道周囲灰白質→青斑核という経路が痛覚抑制機能を発揮していることが示唆された。また、前頭眼野は痛覚抑制に関連のある視床の内側下核に強く投射しているため、運動野→前頭眼野→内側下核という経路も、痛覚抑制に作用している可能性が示唆された。
三叉神経痛の中には、薬物や外科的療法により治療できない症例が少なからず存在する。こうした難治性の三叉神経痛の治療法として、大脳皮質 運動野の電気刺激療法がおこなわれて、一定の治療効果が得られている。しかしながら、運動野を刺激することで、なぜ、痛覚抑制の効果が得られるのか、そのメカニズムはほとんど明らかにされていない。このメカニズムの詳細を明らかにすることができれば、より効果的な治療方法への改善や、より効果的で侵襲性の低い治療法の開発の糸口にすることが可能である。三叉神経痛だけでなく、難治性の神経陰性疼痛の治療へ、広く適応できる可能性が高く、社会的意義が大きい。
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