研究課題
挑戦的萌芽研究
神経細胞の情報のやり取りの場であるスパインは非常に小さい(1 fL)。そのため、化学反応は、確率的になり、入力に対する応答はばらつく。このようなばらつきは、一見すると情報伝達に不利である。ではこのような小さな場でわざわざ情報伝達を行う利点はあるのだろうか?本研究では、確率論的シミュレーションとシャノンの情報理論を用いた解析によって、小さな場での情報伝達によって、入力強度ゆらぎに対する頑健性が得られることが明らかになり、さらにその性質が、ある条件のもとでは普遍的であることを見出した。
本研究による成果は、小さな細胞を基本単位とする生物において、小ささの利点を情報伝達という観点から解き明かしたものであり、今後様々な生物システムの情報伝達のメカニズム解明の足がかりになると考える。また、生物システムにおけるゆらぎを利用した情報伝達の利点は、従来のノイズを極力減らそうとする人工的な通信システムとは全く逆の戦略であると考えられる。このようなゆらぎを利用した通信システムによって、より頑健で、省エネルギーの通信システムへのブレイクスルーになると期待できる。
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