キプリングの後期小説群に的を絞り、女性登場人物に着目した本研究は、1.後期小説群には多数の女性登場人物が描かれており、2.そのほとんどが作中のキーパソンとしてストーリの展開軸の役割を果たしていること、さらに、3.時代を追うごとに彼女たちの人物描写に円熟味が加わり、4.後期作品の秀逸さが、従来得意とされている男性登場人物のみならず女性登場人物の描写においても力量を発揮したキプリングの作家としての成長、ならびに熟練の域に達した作家によって小説内に確固たる位置を占めるに至った女性登場人物の存在そのものに負うところが大きい、という四点を、作品の精読と資料調査、考察によって明らかにした。
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