研究成果の概要 |
北極振動は北半球で最も卓越する大気変動で,北半球の異常気象に影響する.一方,南半球には南極振動があり,オゾンホールとの強い関連から地球環境に極めて重要である.両極は地理学的に最も遠くに位置することから,両振動の共変の存在を調べた研究は無かった. 本研究はこの2つの振動が同期して変動する仮説「メタ・テレコネクション」を提唱し,大気再解析・大循環モデルを用いた解析を行った.その結果,2月と10月は両振動が有意に正相関でシンクロしていたことを示した.またシンクロの原因として,片方の極で発生する成層圏突然昇温に伴う成層圏子午面循環が,熱帯の対流活動に影響し,反対の極へ遠隔的に影響する可能性を指摘した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
北極振動は北半球で最も卓越する変動で,日本などの北半球の広い範囲の異常気象に影響する.例えば,当時における観測史上最高の猛暑となった2010年猛暑と北極振動の関係を示した研究(Otomi, Tachibana, Nakamura, 2012, Climate Dynamics).また,北極海氷減少と北半球の厳冬傾向が北極振動と関係する研究(Nakamura Yamazaki Honda et al., 2015, JGR).よって,北極振動の予測は経済社会的な観点からも危急の課題である.一方,南半球には南極振動があり,これはオゾンホールと強い関連があり,地球環境にきわめて重要である.
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