研究課題
挑戦的萌芽研究
既存の有機炭素同位体比分析システム(EA-IRMS)を基本的に改造せずに,EAによる予察分析,前処理の工夫,量を減らした標準試料の繰返し測定の導入などでどこまで微量で分析が行えるかを検討し,さらに実際のチャートを用いた分析を行った結果,炭素量で約10マイクログラム,約0.025%TOCの試料であれば十分に再現可能な値を得られることが明らかになった.TOCがそれ以下ならば通常のEA-IRMS分析では値の信頼性は得られない.それらはフッ酸処理を行ってケイ酸塩を除去して有機物を濃集した上でEA-IRMS分析を行うか,装置改造して還元管と燃焼管を一体化させ,さらに内部管を細くする等の対応が必要がある.
TOCが小さい試料を漠然とEA-IRMS法で他試料と同様に分析しても,一応のデータは出てしまう.それをそのまま分析値として用いる研究者が散見されたが,そのような分析に信頼性がないことが改めてわかった.一方,標準試料量を変えて特別に分析シーケンスを構築するなどすれば,0.025% TOCでも十分実用的なデータを出し得ることも分かった.それ以下のTOCであれば,分析装置だけでなくサンプルを包む錫箔に含まれる炭素の影響などもあり,EA-IRMS法での分析は困難であることが判った.TOC=0.025%を目安としてフッ酸処理するものとしないものを見極めて,効率的に研究を進められるようになった.
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