研究課題
挑戦的萌芽研究
熱可塑性プラスチックと金属の接合界面における解析を通じて,①C=O基の熱分離に伴う分子構造変化による金属錯体の形成と,②酸素原子を失ったC=O基の炭素原子とNH2基より熱分離した水素原子の化学結合によるC-H基の形成の2つの事象で化学結合を呈するという仮説の立証を試みた.①についてPA66のC=O基由来の酸素原子による反応層をTi-PA66の接合界面に確認すると共に,赤外線分光分析からC=O基のスペクトルシフトを捉え,C=O基が有する酸素原子の熱分離と炭素原子への金属原子の配位結合で金属錯体が形成されたことを確認した.②では,X線光電子分光分析によるTi-PA66の接合界面でのTiN生成と赤外線分光分析によるC-H基のスペクトルを検出し,NH2基の窒素原子は金属と反応すると同時に酸素原子が解離したC=O基の炭素原子とNH2基由来の水素原子が結合してC-H基へと構造変化したことを明らかにした.上述の結果よりC=O基およびNH2基を含む熱可塑性プラスチックと金属の直接接合界面において化学結合に基づく両者の接合機構が作用することを実証した.次に,金属と熱可塑性プラスチックの接合界面の構造解析および力学特性評価を通じて,被金属接合面の組成および表面構造に起因する界面での化学的結合の違いが接合強度に与える影響について検討した.鏡面研磨によりアンカー効果の影響を排除したTi,Fe,Cu,Mg,Alの各金属とPA66の接合材でのせん断強度と接合温度の関係を調査した結果,接合可能な温度域は同等であるが,Al,MgはTiに比べて低い接合強度を示した.原因の一つとしてAlやMgでは70~100 nmの安定な酸化皮膜が接合界面に存在することで上述した反応層の形成を抑制すると共に,C=O基の熱分離に伴い発生する酸素が接合界面で瞬時に強固な酸化皮膜を形成することで直接接合が阻害されたと考える.