本研究は、国内型排出枠取引を素材に環境法に対する財産権的アプローチの見地から再検討するものである。検討の結果、大気や水といった従来、財産権が設定 されてこなかった環境媒体を財として捉え、その再配分の法を構成することは、既存の法秩序で「営業の自由」として環境に負荷をかけることも自由であると主張されやすい法秩序のもと、一定のメリットがあることが明らかになった。もっとも、この構成は環境汚染権を広範に認めるものではないため、ここでいう財産権とは、大気や水といった環境資源を支配する権利として構成すべきではない点に注意すべきである。
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