研究課題
若手研究(B)
本研究は、多民族が集住する地域であった戦前満洲において、日本がいかなるメディア文化政策を実行して、その多民族性を馴致し統治したのかを、公共性の観点から考察したものである。特に、満洲国期におけるラジオ放送と藝文政策について焦点をあてた。また、満洲国成立前の排日運動にも焦点をあて資料を収集した。満洲国期のメディア文化政策は、居住民族の多元性を表現しつつ、メディアを統制しようとするものであった。ラジオ放送では聴取者の民族文化を背景にした番組が多く放送された。これは隣接するソ連や中華民国との電波戦争を戦う必要があったためである。藝文政策においては、芸術性の高い作品よりも普及を重視した方針を採用した。
これまでの満洲国研究では、満洲国の多民族的国家としての性格は強調されてきたが、多くの場合は、理想的なものとして描こうとするか、いかに欺瞞に満ち挫折に至ったかを描くものが多かった。本研究では、満洲国のメディア文化政策が、多民族性・多文化性を強調せざるを得なかった状況を明確にすることで、その必然性を解明した。これはグローバル化が進む現代において多文化共生を構想するうえで重要な歴史的事例になるだろう。
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京都メディア史研究年報
巻: 4 ページ: 70-88
巻: 4 ページ: 182-202
120006629233