研究成果の概要 |
認知症でない高齢運転者の軽度認知障害(MCI)が安全運転に与える影響は明確でない。認知機能健常(CN)な高齢者と比べた場合のMCI高齢者の運転中の危険を見積もるため,半年毎の調査を3.5年間行った。参加者は個別に認知機能,感情・精神状態,交通違反・事故,運転中止等の運転イベント,運転行動を評価された。ベースライン調査に基づき, 参加者278名はCN群188名,MCI群66名,区分困難なその他群24名に分けられ,追跡された。開始後2.5年間における運転中止,運転中の交通違反・事故を含む運転イベントの発現は,2群間で統計的に有意な差を示さなかった。全てのMCI高齢者が危険な運転者とは言えない。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
認知症レベルの認知機能障害は安全な運転を妨げると知られる一方で,軽度認知障害(MCI)の運転者においてその認知機能低下が安全運転に与える影響ははっきりしていなかった。今回, 後方視的/前方視的調査に基づき,前者については3年間,後者については2.5年間の運転イベントについて検討したところ,NC/MCI群間の危険運転リスクに有意差は認められなかった。一方で,ベースライン時点の時計描画検査(CDT)の低成績がその後2.5年間の運転イベント発現を有意に増加させていた。結果は高齢運転者の危険運転予測に対するCDTの有用性を示し,またMCI高齢者の全てが危険な運転者とまでは言えないとする見方を支持する。
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