本研究は、障害児教育領域における教育運動、とりわけ就学運動の歴史に着目することから、戦後日本における障害観や差別観等の歴史的変遷の一端を捉えようとする試みである。申請者は、日本の障害者運動の歴史を主に研究する者であるが、なかでも就学運動は、能力に基づく差異的処遇について――それが差別なのかどうかという点も含めて――考察を深めていくうえで格好の素材である。本研究では、2年間という短い期間ではあるが、これまでの申請者の研究の成果を踏まえつつ、戦後日本の教育運動、とりわけ就学運動の思想が既存の教育の目的やあり方を相対化するいかなる思想的なインパクトを有していたのかを明らかにしている。
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