研究課題
若手研究(B)
今回われわれは、世界で初めてヌタウナギの内耳発生の詳細な観察に成功した。また、同時にヤツメウナギの内耳も観察し、形態、遺伝子レベルでヌタウナギと比較した。その結果、顎口類の前半規管と後半規管の位置を決める発生メカニズムが、これら2種に備わっていることを発見した.さらに、第3の半規管である外側半規管について、円口類はこれをもたないものの、その検出器(膨大部稜)と相同な感覚上皮と、その情報を中枢へ伝える神経枝の存在を同定した。以上から、脊椎動物はその共通祖先の段階で、思いのほか複雑な半規管をもっていたと推定できた。
人間が人間について知りたいというのは人類普遍の知的好奇心のひとつである。われわれヒトの複雑なからだは、どのような進化を経て成立したのだろうか?三半規管はわれわれの平衡器官として大変重要な構造物で、めまいなどを伴う疾病にも関連の深い器官である。複雑な形態を持つ半規管の進化の過程は、これまで謎に包まれていたが、一半規管から一つずつ数を増やしてきたと単純に理解されてきた。ところが今回の我々の研究で、実際の進化はそう単純なものではなく、共通祖先の段階で多くの三半規管の構成要素をすでに持っていることがわかった。
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