研究課題
若手研究(B)
同一のゲノム情報をもつにも関わらず、環境に応じて表現型を変化させる現象は表現型可塑性と呼ばれる。北海道に生息する有尾両生類であるエゾサンショウウオ(Hynobius retardatus)の幼生は、被食者・捕食者の存在や個体群密度に応じて、明瞭な表現型可塑性を示す。本申請課題では、本種を対象として次の研究を遂行した。①表現型変化を引き起こす内分泌系反応を明らかにするために、脳下垂体を用いたトランスクリプトーム解析を行い、発現が変化するホルモン遺伝子を同定した。②可塑的表現型進化のプロセスを明らかにするためにRAD-seq解析をおこない、SNPを同定し、それを元に本種の進化史を推定した。
表現型可塑性の研究は、至近要因を探る分子発生学的な研究と、究極要因を明らかにするための生態学的な研究が先行しており、遺伝的背景は御座なりにされてきた。生態系においては地域集団間で多様な可塑性を保持する生物がいる一方、その進化を探るのは技術的に難しかったからである。本研究の最大の特色は表現型可塑性という現象について、先行研究とは異なる学際的なアプローチにより、分子機構と進化過程を同時に明らかにした点である。これによって、今後、原因遺伝子の機能解析が可能となり、可塑性がどのように生態系や発生過程に影響を及ぼしているか調べることができる。したがって、本研究は大きなインパクトをもつと言える。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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