研究課題
若手研究(B)
細菌の「生きているが培養できない:viable but non-culturable (VBNC)」状態は、低温などの何らかの環境ストレスにより、本来培養可能だった細菌が培養できなくなる現象である。VBNCは様々な細菌で見出されている現象だが、植物病原細菌では低温や貧栄養などの環境ストレスによってVBNC状態が誘導されることは報告されているものの、誘導に関わる遺伝子発現制御機構は知見が極めて乏しいのが現状である。本研究では、植物病原細菌からVBNC状態誘導に関わる遺伝子を同定することで、VBNC誘導における遺伝子発現制御機構の解明を目標としている。平成29年度は、貧栄養によるVBNC誘導条件でVBNCが誘導されない変異株を用いて解析を行った。具体的には、トランスポゾン導入によりランダムに変異を導入した変異株プール作製後、VBNC状態が誘導されない変異株を取得した。これら変異株において、導入されたトランスポゾン配列を起点とし、トランスポゾン導入により発現抑制された遺伝子の同定を試みた。その結果、推定上遺伝子を含むいくつかの候補遺伝子を得た。VBNC状態が誘導されるためには、VBNC状態が誘導されるための環境シグナルを認識する「センサー」と、VBNC状態となるための遺伝子発現を制御する「スイッチ」に相当する遺伝子群の存在が推測される。今回得られた候補遺伝子の中には転写制御に関わる遺伝子等も含まれており、これら遺伝子が直接的あるいは間接的なスイッチとして機能し、培地上での増殖に必要な遺伝子発現が制御されることでVBNCが誘導される可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
PLoS Pathogens
巻: 13 号: 6 ページ: e1006463-e1006463
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Journal of General Plant Pathology
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