研究課題/領域番号 |
16K19022
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
薬理学一般
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
中村 裕二 東邦大学, 医学部, 助教 (10614894)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2016年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2018年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2017年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2016年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | Ouabain / 遅延後脱分極 / 後収縮 / 薬理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、モーションベクトル法と細胞外電位測定法を組み合わせることにより、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の電気的興奮と物理的収縮を同一標本において精密に同時評価し、iPS心筋シートが薬物の催不整脈作用を検出できるか、さらにヒトに対してどの程度の外挿性を持つかを評価することを目的とした。 本年度は、研究計画に従ってouabain誘発性不整脈の評価を行った。64ch多電極プローブ上に培養したiPS細胞由来心筋細胞シートに電気的ペーシングを行い電気的興奮と物理的収縮を評価した。次いで最終濃度が0.1, 0.3および1 μg/mLになるようにouabainを累積的に投与し、それぞれの濃度において電気的ペーシングを行い、同様に電気的興奮と物理的な収縮を評価した。 Ouabain投与前のiPS細胞由来心筋細胞シートにおいて、電気的ペーシングは遅延後脱分極および後収縮を誘発しなかった。0.3 μg/mLのouabain投与により、局所的な全体の収縮と同期しない異所性の収縮を認め、その異所性の収縮は電気的ペーシングで増強し、周期長を600 msから500 msに短縮することによってさらに増強した。これはCa過負荷により誘発された後収縮と考えられた。1 μg/mLのouabain存在下においては、心筋細胞シートの自動能は停止し電気的ペーシングにも反応しなかった。どの心筋細胞シートにおいても遅延後脱分極の発生を認めなかった。 Ouabainと電気的ペーシングにより後収縮を誘発できたことは、ヒトiPS細胞由来心筋細胞シートがCa過負荷により誘発される筋小胞体からのCaの漏出を原因とする催不整脈性の評価に利用できることを示唆している。一方で遅延後脱分極を発生しなかったことは、細胞内Ca濃度が増加しても、それがNa-Ca交換体を介して膜電位に影響する程度が小さいことを示唆していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた実験を行い、ouabainの濃度および電気的ペーシングの周期長を変えた実験を行い、催不整脈性の指標となりうると考えられる後収縮の発生しやすいouabain濃度およびペーシング周期長を確定させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ouabain誘発性不整脈に対して、リアノジン受容体作用薬およびクラスI抗不整脈薬のNa+チャネル遮断薬を投与して、その抗不整脈作用と興奮収縮連関との関係を評価する予定である。次いでadrenaline誘発性不整脈の評価を予定している。 また、他のin vitroモデルで検出されたoubain誘発性遅延後脱分極が、ヒトiPS細胞由来心筋細胞においては観察されなかった。この差異についても考察する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は研究実施期間を確保し、当初の予定通りヒトiPS細胞由来心筋細胞および実験用試薬の購入を行う予定である。
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