研究課題
若手研究(B)
本研究計画では、肥満病態の中核をなす脂肪炎症に着眼し、酸化ストレス応答において中心的な生体防御機構を発揮するKeap1-Nrf2系が、本来より知られる抗酸化作用を介さずに、免疫調節因子として直接脂肪炎症を抑制する可能性を追求することを研究の目的とした。申請者はこれまで肥満モデルマウスを用いた解析から、Nrf2 活性化による強力な肥満抑制やインスリン抵抗性改善作用を明らかにしてきたが、分子機序については不明であった。そこで本研究を通しNrf2 による脂肪炎症抑制の分子機序の解明、さらに肥満治療の新たな可能性の検討を目指した。肥満マウスモデルとして高脂肪食負荷モデルと遺伝子改変肥満モデルであるdb/dbマウスを導入した。またNrf2活性化マウスとしてNrf2の抑制制御因子であるKeap1遺伝子の発現量を減少させた遺伝子改変マウスを作出し実験に用いた。解析の結果、高脂肪食負荷モデルおよびdb/dbの両モデルマウスにおいて、Nrf2活性化は脂肪組織の炎症関連遺伝子の発現量や炎症に伴う脂肪細胞のアポトーシスを強く抑制することがわかった。次に責任臓器の解明を目指し、臓器特異的遺伝子改変マウス(マクロファージ特異的Nrf2活性化マウス及び脂肪細胞特異的Nrf2活性化マウス)を作出し高脂肪食負荷モデルにおける脂肪組織炎症の解析を行なった。その結果、マクロファージ特異的Nrf2活性化マウス及び脂肪細胞特異的Nrf2活性化マウスの両マウスで高脂肪食負荷後の脂肪炎症が抑制されることが明らかとなり、Nrf2活性化による脂肪炎症抑制には炎症性細胞及び脂肪細胞の両細胞の関与があることが示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
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