研究課題
若手研究(B)
手術適応となったアルドステロン産生腫瘍(APA)44症例を対象にゲノムDNA,RNAを抽出した。ゲノムDNAを対象に体細胞変異を検索したところ、KCNJ5遺伝子変異は36症例(81.8%)、ATP1A1は2症例、ATP2B3は1症例、CACNA1Dは1症例を確認した。KCNJ5遺伝子変異の有無で臨床的特徴を比較したところ、KCNJ5遺伝子変異では女性が多く(P = 0.046)、若かった(P = 0.014)。また、副腎静脈サンプリングにおけるLR比が高値であること(P = 0.005)や、APA摘出後の高血圧寛解率の高さが明らかであった(P = 0.005)。KCNJ5遺伝子変異を有する症例には以上のように明らかな臨床的特徴が見いだされた。遺伝子発現についてはKCNJ5遺伝子変異APAに対し、既知の体細胞変異を認めないAPAではCYP11B1遺伝子の発現上昇が明らか(P=0.007)である一方、CYP11B2遺伝子に関しては、その他の体細胞変異APAで発現上昇が明らかであった(P=0.023)。さらに、これまで副腎腫瘍で遺伝子発現が確認され、ステロイド合成への関与も報告されている炎症関連遺伝子(NFKB1, TNFA)についても同様に解析を行った結果、これらの遺伝子はKCNJ5遺伝子変異を有するAPAで発現低下し、既知の体細胞変異がない場合は発現上昇する傾向を認めた。さらに、網羅的DNAメチル化解析を施行して、APAにおけるDNAメチル化状態の定量解析を行ったところ、APA全体において多様なメチル化パターンを示す中で、KCNJ5変異陽性例は均一なパターンを示した。KCNJ5変異陽性例APAの臨床的特徴、分子生物学的特徴を明らかにすることが出来た。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
臨床化学
巻: 46 ページ: 28-33
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 476 号: 4 ページ: 614-619
10.1016/j.bbrc.2016.06.007