研究課題
若手研究(B)
我々はマウス心不全モデルを用いて、有意に転写されてくるタンパク質をコードしない新規長鎖非コードRNAを同定し、その心肥大における役割の解明を行っている。これまで何も転写産物が生じないと考えられていた遺伝子間領域から転写されてくるlong intergenic noncoding RNAであり、lincRNA-Hy5と名付けている。二つの遺伝子の間から転写されてくるlincRNAであるため、独自のプロモーターを有することが予想された。そこで我々はプロモーターアッセイを行ったところ、心不全で重要な働きを行うSerum Response Factor(SRF)で転写活性が上昇することを見いだした。またlincRNA-Hy5の作用機序を解明するため、核内の結合タンパク質の同定を試みた。ビオチン化lincRNA-Hy5を作製し、肥大した心臓の核内タンパク質を結合させ、結合したタンパク質を質量分析で網羅的に同定したところ、非常に興味深いことに、最も特異的に結合するタンパク質は転写因子であった。またlincRNA-Hy5と、この転写因子との結合にlincRNA-Hy5のどの部位が重要であるかの同定にも成功した。lincRNA-Hy5の生体での働きを解明するため、lincRNA-Hy5欠損マウスを作製し、その表現系を解析しているところである。8週令までの解析にとどまるが、普通に生存し、心機能も心エコー上は正常であった。ただし、心臓が少し小さい傾向にあり、また興味深いことに繊維化マーカーであるコラーゲンや、収縮タンパク質を構成するミオシン重鎖の遺伝子発現が有意に低下していた。現在はこのlincRNA-Hy5欠損マウスに圧負荷を加えることにより心不全を誘導した場合の心機能の評価を行っているところである。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定より非常にスムーズに進行している。lincRNA-Hy5の発現を制御する転写因子の同定や、その転写因子の結合部位の同定も終了した。また核内と細胞質におけるlincRNA-Hy5結合タンパク質の同定も終了している。またlincRNA-Hy5欠損マウスの正常状態下での表現型解析は終了しており、圧負荷における解析もほぼ終了に近い状況である。以上のことから当初予定した以上に進展していると考えている。
lincRNA-Hy5の圧負荷下での機能解析を行うために現在圧負荷を与えたlincRNA-Hy5の心臓を用いて、クロマチン免疫沈降等の実験を行っている。これが終了すれば論文投稿可能であると考えている。lincRNA-Hy5は、心臓と骨格筋に特異的に発現するlincRNAであるため、心臓の解析が終了すれば、骨格筋における働きの解析を行う予定である。またlincRNA-Hy5は心臓に保護的に働いているという結果が得られつつあるため、アデノ関連ウイルス9を用いて心臓特異的に過剰発現させ、心不全が改善するかを検討予定である。
次年度は次年度使用額も合わせて、消耗品やマウス飼育代に充てる予定である。
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PLoS One
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http://kyoto-u-cardio.jp/kisokenkyu/metabolic/