研究課題
若手研究(B)
膵β細胞の自己増殖能は一般に低いと考えられているが、骨髄移植によりレシピエントのマウスの膵β細胞増殖が促進されることが、我々の研究室からも含め、複数の研究室から報告されてきた(Endocrinology.148(5):2006-15.2007など)。このことは、骨髄細胞由来の何らかの分泌因子が膵β細胞の増殖を促進していることを示唆するが、その詳細は不明であった。今回、我々は、骨髄移植マウスで認められた膵β細胞増殖のメカニズムとして、エクソソームを介した細胞間miRNA伝達を想定し検討を行った。骨髄移植後に血中エクソソームを採取し、エクソソームに内包されたmiRNAの網羅的解析を行ったところ、膵β細胞の増殖における負の制御因子であるCDK阻害因子(p21Cip1, p27Kip1, p57Kip2)を標的とするmiR-106bとmiR-222が増加すること、また、実際に、これらのmiRNAがエクソソームに含有され移植後の骨髄細胞から分泌されることを見出した。さらに、骨髄移植後の膵島において、これらのmiRNAが内在性の発現上昇ではなく、外来性に導入されて増加したことを示唆する所見を得た。そこで、miR-106bとmiR-222に対するanti-miRをin vivoトランスフェクション試薬を用いて骨髄移植マウスに全身投与したところ、骨髄移植による膵β細胞増殖および血糖改善の効果が有意に抑制された。さらに、miR-106bとmiR-222をSTZ誘発糖尿病モデルマウスに全身投与したところ、これらのmiRNAが膵島に集積し、その標的遺伝子であるp21Cip1, p27Kip1の発現が抑制され、膵β細胞増殖が促進し、血糖値が低下した。以上より、miRNAによる膵β細胞の増殖促進が糖尿病の新規治療法となる可能性が示唆された。(EBioMedicine 15:163-172.2017)
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EBioMedicine
巻: 15 ページ: 163-172
10.1016/j.ebiom.2016.12.002