研究実績の概要 |
当研究室で開発された、EGFR2R-lyticは、がん細胞膜に高発現するEGFRを認識するペプチド部分(EGFR2R)とがん細胞特異的な細胞膜崩壊能を示すlyticペプチド部分を基礎構造として、これらの異なった性質を持つペプチドが有効に機能するように設計された、アミノ酸配列を有し、全化学合成により入手可能な約30残基のペプチドである。本研究の目的はEGFR2R lyticの薬物動態試験、毒性試験を実施し、非臨床試験に向けた評価を行うことである。 EGFR2R-lyticの薬物動態の評価として、先行研究よりEGFR2R-lyticの半減期が10分程度と予測されていることやこれまでの予備検討結果から、薬物動態の測定のためのサンプルをEGFR2R-lytic投与前から、2, 5, 10, 15, 30, 60, 90, 120, 150, 180分後のサンプルを採取した。個体の状況に応じて可能なポイントで採血を行った。採血量を極力50-100μlずつにすることで同一個体からの採血が可能となった。5分付近のサンプルで、EGFR2R-lyticのピークが最大で、60分後の時点ではピークの検出が困難であることが確認された。EGFR2R-lyticの毒性の評価として、単回毒性試験に準じてマウス、ラットに対してEGFR2R-lyticの投与を行い14日間の観察を行った。ラットへの10mg/kgのEGFR2R-lyticの投与直後に、AST、尿素窒素、クレアチニンの有意な増加が顕著に認められ、病理組織標本の評価によって肺の異常所見についても否定できないという結果であった。
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