研究課題/領域番号 |
16K21171
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
植物分子・生理科学
形態・構造
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
飯野 敬矩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特任助教 (90709601)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2016年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2017年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2016年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シロイヌナズナ / 原子間力顕微鏡 / 弾性率 / 植物 / 生物物理 / マイクロ・ナノデバイス / 応用光学・量子光工学 / 生体材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、マイクロ流体デバイス、原子間力顕微鏡(AFM)、フェムト秒レーザーを用いて、植物細胞が刺激として受容する力学作用の特性とそれに対する応答を明らかにする。近年、植物試料の力学特性計測にAFMが多く用いられており、その課題として、外力を付加する際に植物試料がガタつき、標的微小領域への外力の付加や応答の検出が乱される点が挙げられる。この点を、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて植物試料を傷めずに安定して固定できるデバイスを作製することで解決し、AFM・フェムト秒レーザーと組み合わせた力学計測を行う。 平成28年度の前半は、PDMSデバイスを安定して作製できる環境・体制を整えた。また、PDMSデバイスの他にも、より簡便に植物試料を保持できるデバイスに関しても探索を進めた。その結果、ガラス基板に穴や溝を作製することで、比較的大きい植物試料(mmスケール)をAFM下で固定することに成功した。これらの保持デバイスを用い、シロイヌナズナの芽生えの力学計測を行い、その形状依存性について考察した。この結果は、第64回応用物理学会春季学術講演会にて発表した。 さらに、平成29年度に実施予定であったフェムト秒レーザー誘起衝撃力を用いた力学特性計測の原理検証実験をゼブラフィッシュ胚を用いて行った。ゼブラフィッシュ胚は受精後12時間程度までは球形であり、植物組織に比べてシンプルな形状なため、原理検証実験の試料に用いた。その結果、フェムト秒レーザー誘起衝撃力をゼブラフィッシュ胚に付加することで微小な変位を引起し、それをAFMで検出することに成功した。さらに、変位の解析には有限要素解析を導入し、胚を伝搬する応力波に関する考察を行った。この結果は、RIEC International Workshop on Biomedical Optics 2017にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定に従い、まずはPDMSデバイスを試作し、そのデバイスに試料を配置し、原子間力顕微鏡(AFM)による計測を行った。試料には、シロイヌナズナの芽生えを用いた。AFM計測の結果には、茎の直線状の部分および湾曲した部分の双方で再現性が見られ、デバイスにより試料が適切に保持されていたことが示唆された。この結果は、AFM下で植物試料を固定できるデバイスの作製を達成したといえる。 また、平成29年度に実施予定であったフェムト秒レーザーとAFMを組合せた計測では、集光フェムト秒レーザーが水中で誘起する衝撃力を試料に付加し、試料表面に外力を瞬間的(μsスケール)に付加し、試料に引き起こされた瞬間的な変位を探針の振動として検出する事に成功した。変位の解析に関しては、有限要素解析も導入することができ、計測から解析までの基礎を構築することができたと考えられる。 一方で、平成28年度に実施を予定していた年度植物試料を任意の形状に変形させ、その状態で固定するためのデバイスの試作については、実施できていない。その理由は、研究室所有のAFMに不具合が起き、平成29年度に安定して使用できるかの見通しをつけにくい時期があったため、AFMとフェムト秒レーザーを組み合わせた計測の原理検証実験を優先して実施したためである。 以上のように、当初の予定から遅れている研究内容もあるものの、次年度に予定していた研究内容を前倒しして実施し、良好な結果を得ることができた。従って、研究全体の進捗としては、おおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、植物試料を任意の形状に変形させ、その状態で固定するためのデバイスの作製、及びフェムト秒レーザー誘起衝撃力とAFMを組合せた計測の植物試料への適用に取組んでいく。 上記のデバイス作製に関しては、植物試料を固定するために必要な構造を明らかにする。この構造をユニット化し、これらを組合せることで、試料を任意の形状に変形させ、その状態で固定するためのデバイスの試作を行う。その性能は、植物試料の変形の度合を画像情報から定量し、その再現性に基づき評価する。本デバイスの新規性は、試料を保持できる点に加え、試料の取り扱い精度に再現性と定量性を付与できる点にあると考えており、その評価に注力する。その上で、変形させた試料の力学特性を測定し、その形状依存性を調べる。力学特性に変化が見られた場合には、変形させた状態下における細胞内物質の分布や量の変化を蛍光観察により確認し、その力学特性変化に対する細胞応答の依存性を調べる。これらにより、変形が及ぼす力学特性の変化及びそれに対する細胞応答を明らかにする。 フェムト秒レーザー誘起衝撃力とAFMを組合せた計測の植物試料への適用に関しては、植物試料に対して衝撃力を付加し、その変位を検出できるかを確認する。変位が確認できた場合には、蛍光観察とAFMによる固さ計測を行い、細胞応答の定量化を目指す。一方で、堅い細胞壁を持つ植物試料に変形を引き起すには、動物細胞に比べて高いレーザー強度が要求される可能性が予測される。その場合には、現行の光学系を見直し、より高強度のレーザーを試料に照射できるようにする。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品購入のために使用する予定。
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