研究課題
若手研究(B)
本研究から得られた結果から、白亜紀日本の造山帯を構成する地質体の1つである高圧型深部変成岩の表層露出に至る上昇プロセスは、これまで指摘されてきた海嶺接近に伴う沈み込むプレートの沈み込み角度の浅化の影響だけではなく、沈み込み物質からの脱水流体による深部岩石の粘性率の低下、構造浸食作用による前弧域岩石の削剥、さらには沈み込み帯上盤側で起こる反コーナー対流領域の拡大という複数の要因が重なった結果であったことを示唆した。このことは「構造浸食作用」が沈み込み帯深部岩石を上昇させるための必要条件の1つである可能性が高いことを示す。
本研究の学術的意義は、古典的地質学・岩石学にジルコン年代学/地球化学という分析手法を組み合わせ、造山帯形成プロセスの核の1つである「高圧型変成岩上昇」に「構造浸食作用」が深く関わっていたことを示したことである。また、「日本列島を構成する基盤岩がその形成から現在に至る過程でどのように壊変・進化・成長してきたのか?」に対する新たな知見ももたらした。したがって、「火山・地震大国日本の形成・進化」に関する自然科学的教養の深化という意味でも本研究が果たした社会的意義は大きいだろう。
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