研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
本研究では製糖業やコーヒー産業などグローバルな商品作物に着目することによって、アメリカ準州ハワイで日本人が得た知識・技術・資本が、日本の熱帯植民地の農業政策や実践には欠かせない要素であることが明らかになった。さらに、カリブ海を中心とした大西洋の糖業に対抗する形で、ハワイを中心とした太平洋地域の糖業の連携が製糖関連企業・技術官僚等によって図られており、その連携は宗主国の勢力圏とは異なる地政学的構図を示すことが浮き彫りとなった。よって、本研究を通じて、太平洋地域の植民地史を検証するにあたり、複数帝国と植民地間の多方向的移動と重層的支配勢力の検討の重要性を実証的に示すことができた。
本研究の学術的意義としては、これまで一帝国の一植民地に関する研究を中心に蓄積がなされてきた太平洋地域の歴史学研究に対して、複数帝国・植民地を結ぶ移動・連帯に関する実証的検証の重要性を提示したことである。つまり、背景が異なる多民族の移動の影響を強く受けた近代太平洋世界の検討にあたり、宗主国の直接的支配力のみならず、思想・技術・知識をもたらした多様な背景を持つ人々や植物の媒体的役割・間接的影響力に着目したことに意義がある。また、社会的意義としては、現在も世界中で消費される砂糖やコーヒーの歴史を明らかにすることで、今日まで続く産地ー消費地の経済・社会・人種的格差のルーツを提示できたことが挙げられる。
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