研究概要 |
独創的な発想による創造性の発現が,これからの社会に求められている.しかし,創造性に関する本質的議論やその育成方法への科学的追究は未だ,途上にある.本研究は知識という観点から,理数科教育における創造的学習のメカニズムを論じ,問題に取り組んだ.具体的には,新しい知識の生成に有効なデザイン思考という考えかたを導入することで,主体的な理科の探究プロセスを支援する方法を提案した.独創性に優れた創造的思考過程を探る目的で,新しい概念を創出する過程について,実験を行い,その特徴を確認した.分析において,本研究は,情報科学の成果である電子概念辞書を利用し,着想のプロセスを意味体系の空間上で取り扱い,優れて独創的な場合,思考がどのように広がっていくものなのか,主題的関連を手がかりにその特徴を示した.これを踏まえ,本研究では,好奇心を誘発し動機を喚起する仕組みを内包しながら,探索中に思考の範囲を学習者がひろげていくことで結果として独創性の高い着想に至るような理科の学習をおこなわせたいと考えた.そのために,学習者自身が設定した主題を取っ掛かりに,自分で思考の範囲を広げていくことができるようなデザイン思考を導入した課題,たとえば「『カエル』のような乗り物をデザインしよう」から,何か新しいものを考案するという興味のなかで「カエル」のことを知る学習のプロセスを支援するシステムとして"Interactive Design Workshop for Science Knowledge"(IDWforSK)を考案した.システムのプロトタイプを用い,実際の高等学校において実習を行った.(実験協力者は,福岡県立修猷館高等学校の生徒3名,さらに同校と石川県立小松高等学校理数科の教員からシステムへの助言を得た)実際にシステムを用いた学習では「跳ねる消防車」「臭いを覚える郵便車」「脱皮するヨット」などが生成された.
|