研究概要 |
数学学習は,教師が例題によって解法の教示を行い,学習者はその例題の類題を解決する練習を繰り返し行うという方法で進められる.このような学習では,多様な特徴を持つ問題が多数必要になるため,学習のための問題を供給することは,学習支援における重要な課題であると考えられる.そこで,本研究では数学の文章題を対象とし,「問題状況」と「解法」の特徴において多様な問題を生成するためのシステムを実現し,評価実験によって本システムの有効性を確認した. 本システムの評価は,1.問題のバリエーションを増殖させ,適切な問題を生成することができるかを確認する動作実験,2.教師ユーザとのインタラクションを通じて有効な知識を学習することができるかを確認する運用実験を通じて,それぞれ実施された.動作実験では,市販の問題集から抽出した問題の初期セットをシステムに登録し,システムに問題を生成させて,教師ユーザとインタラクションを行うサイクルを繰り返すという方法で実施した. 動作実験での教師ユーザは研究者自身が行った.この結果,システムは初期セットに含まれない新しいタイプの問題を生成することで,実際に問題のバリエーションを増殖させることが可能であることが判明した。図には,3つの市販の問題集から構成されたデータセット,およびそれらをマージしたデータセットから生成された問題パターンの増幅割合が示されている。 また,運用実験では,教師ユーザとのインタラクションを行うことで,ある程度適切な問題が生成可能になることが確認された.具体的には,ノービスとして一般大学生,エキスパートして数学専攻の大学院生と高校数学教師に教師ユーザを依頼し,本システムを使用して作問を行ってもらうことで,本システムがユーザとのインタラクションを通じて,有効な知識を学習することができるかの確認を行った.この結果,システムはエキスパートからは有効な知識を学習することができたが,ノービスからは適切な知識を獲得できないケースが確認され,本システムが問題生成を実行するためには,充分な数学能力を持つ教師ユーザが必要であることが判明した.上記の動作実験,運用実験に関して追加的実験を行い,さらに頑健な結果を得た。
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