研究概要 |
イギリスの新しいAレベル物理コース「アドバンシング物理」を日本の高校と大学の物理教育の中で活かすために,複数の高校と大学をつなぐ新しい高大連携を構築し,継続的な研究会活動を行う中で,公開授業を核とした実践的な研究を行ってきた。本年度は,これまでに行った4回の公開講座の成果や特徴的な単元についての検討結果が研究会会員の個別の授業に与えた影響について,研究会内外に明らかにすることを目的として,平成18年7月に「公開ミニシンポジウム-アドバンシング物理に学んだ授業実践-」を開催した。シンポジウムには,北海道,東京都を含む他府県より物理教育関係者36名の参加者があった。はじめに,8高校,2大学の物理教員による個別の実践報告を行い,続いて,質疑応答を含む全体討論を行った。そこでは,探究実験の具体的なノウハウに関する質問から,現在のカリキュラムに関する議論まで,幅広い活発な意見が出た。また,終了後に行った参加者に対するアンケート調査の結果,今後の本研究会の活動に期待することとして,「すぐに使える実験書の発行」や「教員対象のワークショップの開催」など,本研究成果の現場へのより積極的な還元を求める要望が多いことがわかった。 ミニシンポジウムの結果,本研究成果が多くの会員の学校において,部分的ながらも様々な形で授業に組み込まれていることがわかった。中でもセンサーを用いた電流回路学習の単元は,複数の学校で実践されており,実践におけるノウハウや生徒の反応等の情報が蓄積されていた。そこで,現行の高校物理カリキュラムに対応した同単元の授業プランを試作し,パイロット校にて実践を行った。実践後の生徒の自己評価の結果では,9割以上の生徒が興味関心を示し,理解度については約半数の生徒が肯定的な回答をしたが,実際の理解度は生徒が自己評価するほどには高くなかった。これは,生徒の興味関心の高まりが,理解度を過剰評価させたと考えることもできるが,詳細についてはまだまだ検討の余地がある。今後,実践校を増やし,実践と検討を繰り返しつつ,授業展開を確定していく必要がある。
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